用語集

略語(アルファベット順)

 

用語 内容
EBITDA

Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの略。支払利息前、税引前、償却前の利益を示し、本業のキャッシュ収益性を示すことができ、他社との収益性比較や、投資効率などに用いられる。M&Aの現場ではイービットディーエー、イービットダー、単にイービットなどと呼ばれる。

IPO

Initial Public Offeringの略。最初の公開された株式の売りを意味する。非上場企業が初めて東京証券取引所のJASDAQ市場やMothers市場などで売買できる新規株式を発行し、資金を調達する。一般的には創業者が保有する発行済株式も同時に売り出す。上場後の増資は「Initial」を外しPO(Public Offering)と称する。他方、Spotify社など潤沢な資金を持つ非上場企業が検討する新しいスタイルとして、新規株式を発行せず直接上場(ダイレクトリスティング)するという方法もある。

LBO

Leveraged Buy Out の略。レバレッジとは自己資金と合わせた借入など外部資金調達を意味し、買収資金を借入や社債などを利用する手法を意味する。ソフトバンク社がボーダフォン社を買収した時は1兆超を調達した。しかし、今後は大企業だけでなく中小企業の事業承継に際しては、地方銀行や信用金庫などがLBOの資金を提供することが期待される。

LOI

Letter of Intent の略。直訳すると「意向の書面」であり、M&Aのプロセスの中盤で、買収側が売却側に「この条件で買う意向があります」という意思表示に使われる。

M&A

Merger(マージャー)&Acquisiton(アクイジション)の意。企業の合併と買収と訳される。手法としては、株式取得や交換、会社分割、事業譲渡など様々な手法が選択される。企業の経営企画部などが担当することが多く、資本提携や業務提携のみの場合もある。

MBO

Management Buy Out の略。ここでいうManagementとは経営陣であり、例えば、上場企業の経営陣が非上場化を前提に株式を取得する際に利用される。中小企業でも社内で事業承継する場合はこの手法となる。

PMI

Post Merger Integration(ポスト マージャー インテグレーション)の略。M&Aが実行された後、買収企業で売却企業との経営戦略、人事、業務プロセス、システムなど、企業文化も含めて統合していくこと。M&Aは「手法」のひとつであり、このPMIが充実していないと期待したM&Aの成果はでない。逆にPMIを充実させることで期待以上のシナジーを生むことができる重要なプロセス。大手企業で失敗とされるM&Aの原因のひとつとして散見される。

SWOT

企業や対象事業の事業環境を「Strengths 強み」「Weaknesses 弱み」「Opportunities 機会」「Threats 脅威」区分にてフレームワークで分析することがあり、その頭文字をとりSWOT(スウォット)と呼ばれる。売却企業の企業評価で利用されるが、買収企業にとってもM&Aを行う意義を再度見つめ直す際にも有効。 

TOB

Take-Over Bidの略。株式公開買付の意。上場企業の株式を不特定多数の株主から市場外で買い集める制度で、敵対的買収のイメージがあるが、資本提携を経て友好的な買収時にも適用され、既存株主が売却に応募する機会を公平に与えている。

用語(50音順)

アドバイザリー契約

売却企業又は買収企業がM&Aに関する仲介業務を依頼する契約。通常は排他的な専任依頼となり、業務内容、報酬、秘密保持などの項目が明記される。

アクイジション 買収の意。不動産の場合は取得を意味する。「M&A」のAはこのアクイジション(Acquisition)。逆に売却の場合、ディスポジション(Dispositon)、エグジット(Exit)などと称される。
会社分割 会社を複数の会社に分割し、事業、資産、負債、組織を移転する主要。対象事業を新設の会社が引き継ぐ「新設分割」と、既存の会社が引き継ぐ吸収分割」がある。
企業評価 企業又は事業がいくらの価値があるかという経済的評価の意。上場企業の場合は、株価から時価総額が算出できるが、非上場の中小企業では、時価純資産+営業権という考えが一般的。営業権は、業種にもよるが、営業利益の3倍程度と評価される場合が多い。
基本合意 譲渡の対象、その金額、決済の時期などM&Aの基本条件の合意。通常、文書を締結し、その後、売却側がデューデリジェンス(査定)、監査の機会を付与する。これにより、いよいよM&Aの終盤へ突入する。
最終契約 M&Aにおいてメインになる法的拘束力を持つ契約書。選択された手法により、株式譲渡契約、事業譲渡契約などと称される。売買の対象、価格、支払条件、競業避止、表明保証などの条項が明記される。
サクセッションプラン 大手企業が導入する後継者育成計画。経営幹部の後継者候補を抽出する方法、その育成プログラムの作成方法などを定める。これにより円滑なバトンタッチを準備することができ、企業リスクに対応する「守り」とともに、外部環境に迅速に対応できる「攻め」の効果がある。このプランの有無により企業価値も向上する。
守秘義務契約 企業の情報を第三者へ勝手に開示されないよう相手方と結ぶ秘密保持に関する契約。CA(Confidential Agreement)、NDA(Non Disclose Agreement)とも略される。なお、Non discloseの語源としては、close=隠されている から disを加えcloseを否定(つまり開示)し、さらにnonで否定(やはり隠す)という二重否定を通じて秘密の意。
時価純資産 企業の経済的な評価を行う場合、上場株式であれば取引価格を参考にすることができるが、非公開企業の株式の場合は、資産と負債を時価評価したうえで算出される。中小企業の多くは税務会計ベースで決算を組んでおり、資産及び負債とも時価評価すると大きな差異が生じることが多々ある。
事業譲渡 複数の事業をもつ会社が、会社全体でなく特定の事業だけ譲渡する場合の手法。買い側にとっては、対象企業の潜在的な債務(保証などの簿外債務)を切り離すことが可能となる。
譲渡制限株式

中小企業の多くは株主が親族以外の第三者などへ分散していかないように、譲渡により取得する際は株主総会で承認を必要とするよう定款で定めてある。この場合、株式譲渡契約の際には株主総会での事前承認が必要となる。

ターンアラウンド・マネジャー

経営が悪化や破綻した企業を再生するスペシャリスト。一般的には、新たなスポンサーが再生請負人であるTurnaround managerを指名し、その企業の経営者として登用される。

デューデリジェンス

Due Diligenceは、直訳すると「なされるべき注意義務」。M&Aにおいては買収側が最終的な買収判断(いくらで買うか)をする際に、売却側に情報開示を求め企業内容を詳しく精査する。現場ではデューデリ、DD(ディーディー)と呼ばれることもある。財務面、法務面、人事面、ビジネス面など多面的に行われる。

ドレッシング

売上や資産の水増し、負債の未計上など、見かけ上問題ないよう装い粉飾決算となっていることを、サラダにかけるドレッシングに比喩し「ドレッシングされている」と表現する。中小企業の場合、粉飾というと仰々しいが、金融機関や取引先向けに業績、財政を良く見せようという行為や、資産が簿価(取得価格)で計上されているので、これらを時価評価に換算する必要がある。

ネームクリア ノンネームで打診した企業名を、守秘義務契約を締結したうえで開示すること。ノンネーム情報でさらに関心を示した買収候補へ適用される。
ノンネーム 買収候補向けの初期的な情報は、会社名、ブランド名、店舗名を明かさない匿名(ノンネーム)で公開される。業種や事業規模、地域などを大まかな情報に限定する。取引先や従業員から信用不安とならいないよう匿名性を保ったうえで初期的打診を行う。
表明保証 対象企業の事業、財務、法務、人事等に関する様々な問題点について、買収監査を経て条件交渉を行うが、すべての問題点を全て精査することは困難であり、また費用対効果のうえでも合理的でない。そこで、実務上は契約書で網羅的な表明保証を行うことが一般的。例えば「提出した商品資料が真実かつ正確であることを表明し、保証する」など。
ファミリービジネス 同族経営。親族のみで会社を所有し、経営している企業を指す。ファミリービジネスでは一貫した経営方針を保ちやすいが、その反面、改革が遅れてしまうこともある。法人税法第2条第10号では株主の上位3名で過半数をしめている会社は同族会社とされる。なお、業界ではFBと略するがFacebookを示すわけではない。
簿外債務 決算書に計上されていない債務。中小企業では税務会計ベースで決算を組んでおり、将来の債務は計上されていないことが多い。例えば、退職金、引渡済商品の保証、子会社の連帯保証、オフィスの原状回復費、顧客から年払いで預かっている売上などが該当し、企業評価ではその分が減額される。